日々の読書、愛犬たち、翻訳、手芸など


by ars_maki
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

<   2011年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧

『バカの壁』

d0112879_18161919.jpg
ご存知養老猛のベストセラー。
甥の廃棄処分本の中にあったので、拾って読んでみた。

原発問題を巡っては、政治家たちの国民をバカしきった
態度には立腹するばかり。
自分の子供でないから他人事でいられるのか。
同時に原発に反対しなかった多数派の一人であることに
後ろめたさを感じていた。

本書の後半で、エネルギー問題を掌握することが世界の掌握に
繋がるといったことが書かれている。
さらに、政治家はお馬鹿であることを前面に出しがちであり、
それに対して哲学者は賢さを前面に出すとある。

な~~んだ、な~~んだ、政治家も哲学者も私達自身なのだなぁ、と
変に納得してしまった。

しかるに、後者の方が問題性が深い。
性質が悪いのだ。
賢さを求めることで、賢くなれると思っているバカの壁を
乗り越えられないからだ。
つまり、スリーマイルズの事故もチェルノブイリの事故も
日本には関係なく、彼らより賢い(と考えるので)日本には
事故が起こらないと考えていたからだ。
完全にバカの壁に塗り込められていたのだ。

ところで、養老が指摘する身体性と無意識、それに「壁」で
連想されたのは、『ゲゲゲの鬼太郎』の作者水木しげるが
南方従軍中、フラフラと彷徨っていたとき、壁がぬぅ~~~と
立ちはだかったというエピソードである。
水木しげるは断崖絶壁に立っていたのだった?!
[PR]
by ars_maki | 2011-07-31 18:16 | 読書

『原発のウソ』

d0112879_2203955.jpg
小出裕裕(こいで ひろあき)京都大学原子炉実験所助教授は、
40年もの間、原発の危険について語ってきた。
福島の原発事故後、クローズアップされざるを得なかった。

本書では、既に分かっている事実を原理的に噛み砕いてくれている。
ポイントは、以下の3点に要約される。

1.「安全な被爆量」などというものは存在しない。
2. 日本は原発後進国。
3. 子供たちと原発被災地の農業、漁業を救うため、年配者は
   被災地からの野菜などを食べるようにする。

最後の項目には、恐れ入ってしまった。
毎日、福島、栃木、茨城、岩手などのものは避けてきていたからだ。
また、北海道のサクランボウよりワシントンからのサクランボウ、
美味しい国産豚肉より不味い米国産豚肉という具合だったからだ。

著者の説得力には脱帽したのだが、癌の心配はないものの素通りして
しまうのだ。
[PR]
by ars_maki | 2011-07-30 22:00 | 読書

『原子炉時限爆弾』

d0112879_22324374.jpg
『原子炉時限爆弾  大地震におびえる日本列島』、広瀬 隆、 ダイヤモンド社、
2010年。

私たちは日ごろから地震に慣らされてきていた。
しかし、たまたま大地震の災害に曝されなかっただけの
ことだったことを311は教えてくれた。

311以前にも、広瀬隆は地震と原子炉の危険を警告し続けていた。
以前から政府ならびに電力会社の癒着、メディアを介しての操作を
指摘していた。

本書は去年の夏に出された。
福島第一原発のメルトダウン。時限爆弾炸裂。

地震の国に住んでいるのに、地震に対する不用心が露わにされた。
広瀬は、地震が起こる道理を原理的に明らかにしている。
先ず、五大陸は元々一つの大陸だったという
日本列島の形成、造山活動から説き起こしているのは、既に
痛感しているように、原発を危険な場所に建設してしまったこと、
さらに言えば、そもそも日本列島は原発向きでは全くないことを
明示するためである。

そもそもの致命的な間違い、ないし錯誤は、大陸間に横たわりつつ、
常に移動しているプレートに注意を払わず、無視してしまったことにある、
と広瀬隆は言う。

プレートの動きに注目すると、すぐに気になるのは、海底がどうなって
いるか、だという。
特定の原発付近の海底の地形を読み取って、危険かどうかを判断
することが出来るというのだ。
音波探査により、海底の凹凸を探るのである。
海底の構造だけでは、不十分である。
また、眼の前の地形を見て、地下の構造を推測することが出来ると
いう。
これは、変動地形学と呼ばれている。

本書では、御用学者として衣笠義博と斑(まだら)目春樹が挙げられている。
前者は、六ヶ所再処理工場の敷地に走る二本の活断層の存在を
隠していた。
後者は、浜岡原発運転差止訴訟で、被告の中部電力側証人として立ち、
原発の安全性を繰り返した。中越沖地震後に原子炉圧力容器などに
発生した歪みを無視。一年後の運転再開を繰り返した。


斑目春樹は、先日、NHKの福島原発事故特集番組に出ていた。
福島の原発事故を悔い、311以前の日々に戻りたいと言っていた。
この発言には、悔いが本当に感じられないのだった。
大きな事故さえなければ、自らの安泰を念じていられるとしか聞こえ
なかったからだ。
しかし、懸念を抱きつつも何もしなかった自分を考えると、五十歩百歩と
いった感は否めない。
しかしながら、斑目春樹が専門家として発言していた事を考えると、
当人は自らの発言が意味することを熟知していたはずであり、
不気味な不協和音が鳴り響かずにはいられない。

管直人首相は脱原発を提唱中だが、以前は、二酸化酸素温暖化を
理由に原発派だった。
管以外にも、民主党幹部には、原子力推進派として、仙谷由人、前原誠司、
直嶋正行ら。
原子力推進派だった著名人に、寺島実朗、毛利衛、枡添要一、大前研一、
野口悠紀雄、吉村作治、浅井慎平ら。

福島原発の事故により、安全神話が崩壊した。
神話は経済成長という大義を受けて、保たれていた。
なぜ事故を考慮に入れなかったのか?
科学と理性への盲信が露呈されたのは、福島原発によってだけではない。
チェルノブイリやスリーマイルズの原発事故でも露呈されていたが、
他人事になっていた。
現在でも原発推進派の声は大きい。
科学と理性への信仰を問い糾す必要がある。
[PR]
by ars_maki | 2011-07-17 22:04 | 読書